大学時代に2年半付き合った私の彼氏。そう、彼は左利きだった。
なぜかわからないけど、いつも私は右にいた。彼氏がそれは
「右にいてくれた方が安心するから。」
と言ったから、私は自然に右にいるようになった。
大学の専攻が違っていたけれど、暇さえあれば一緒に学食でご飯を食べたり、バイト
までの間一緒に過ごしたりと、「若さ」もあったりしてか、すごく一緒にいようとする
気持ちが二人の恋愛を燃えさせていたような気がする。
初めて、彼の家に遊びに行った時に、彼のお母さんにご飯を食べていくように言われた。
「あっ、やっぱりこっち側に座るんだね。」
と私が彼氏に小さくつぶやく。それは、いつも通りの彼の右隣りだった。
「俺、左利きだから、なんでも右にいてくれた方が便利なんだよね。」という彼氏。
そう言って、私の右隣りにあった空いているダイニングテーブルの椅子に座る。
箸を左手に持つ彼と、私の右手がごつごつと当たりそうになる。
「こういうことなんだ。」と話しながら、彼はお母さんが用意してくれた私の左隣の
椅子に移動した。
「あっ、でもなんかトントンって当たるのも一緒にいるって感じでいいかも
しれないね!」
なんて、甘い言葉をお母さんの前でも平気で話す彼。
そんな彼と卒業後遠距離恋愛で別れてしまった私は、しばらく左隣りがすうすうする
感じがした。人と付き合うとその人の「癖」をも好きになっちゃう私は、その後
付き合う彼氏がみんな右利きだから、どっちに座ろうが何も気にしないのだけど、
たまに今はあの彼の右隣りにはどんな彼女が座ってるんだろうと気になる。
未練とかじゃなくて、自分の過去を美化しているのかわからないけど、あの頃は
楽しかったなって思える思い出が結構あるから、そんなことを気にしてしまうのかも
しれない。こんな美化した思い出を思い返すのは私だけなのかな。