バッグの小銭
クラブに行くとき、荷物はクラッチバッグだけにするが、中身はグロス、アイライン、お札、携帯だけだ。
お札から支払ったドリンク代のおつりが小銭でチャラチャラある。
本音を言うとおごってもらうことが前提なのに、そもそも客が少ないかもしれないので、一応多めに7000円くらい持っていく。
タクシー代も含まれているが、帰宅してみると小銭ばかりで計算しても4000円ぶんくらいお酒で消えている。
こんな調子で金曜土曜をすごすので、あっという間に財布はすっからかん。
ごちそうしてくれる男を見つけたときは、一円も使わなくて済む。
クラブに入ったときからチラチラ見てきている男がいるときは、バーカウンターの前にたたずんでみて、何飲もうかな?としばらく悩むフリをする。
どうせどんな酒でも飲めるくせに、一応悩んで隙を与える。
笑えるのが、一緒に来ている女友達全員が、なにも打ち合わせしなくてもこれができること。
みんなチラチラ見られている視線に気づき、おごってもらえると確信しているのだ。
何飲もうかな?というときに、男はバーカウンターで自分のお酒を注文しはじめる。
まるで今私の存在に気がついたように振り返って、一緒に頼むけど?と声をかけられる。
え?、今日はあんまり飲めないかな?って思って?。
とか言いながら一緒に頼む。
乾杯してからしばらく一緒に飲む。
3杯くらい飲んだころに、相手がどんな仕事をしている男なのかとか、お財布事情も掴めたところで、行方をくらます。
なんせクラッチバッグだけで身軽で来ているので、しれっと店を出た所で、友達に連絡して、先に他の店に移動する。
こんなことを繰り返していた。
後日ばったり会ったときは、酔って覚えてないと言って、一杯目だけはこちらがごちそうする。
たいていは向こうが払わせないけど。