一緒にいる運命を感じたある瞬間

私は結婚して三年がたちます。
彼と付き合って初めて、あ、この人とはずっと一緒にいるんだなと思ったある瞬間があります。

それは彼の家にある靴を置いた時です。

彼は一人暮らしをしていて、私はちょくちょくそこに居座っていました。

今までは彼がいる時間帯だけ家にいて彼が仕事に行くときは一度実家に帰ってから私も出勤をしていました。

しかし、そんな生活は大変でしょと言われ、一緒に住もうかということになりました。
二人で住む家を探している間、彼の家に半同棲することになりました。
そして、私は靴を彼の家の玄関に置きました。

靴というのは普段仕事に履いていくものではなく、ちょっとそこまで行くときに履くようなサンダルのような靴です。
かしこまった靴でなく、気軽に履ける靴を彼の家の玄関に置いたことで、そこが私の家になったような気がしました。

今まで付き合った人で一人暮らしをしていた人は他にもいます。
けれど、長くそこにいるためのサンダルを置いたことはありませんでした。
いつでも気軽にここに来ていいんだという不思議な安心感と、自分の場所になったような気恥しさは今でも忘れません。

それからほどなくして彼と私は一緒に住む家を決め、1年後籍を入れました。
彼に後から聞いたところ、帰ってきて私のサンダルが置いてあったことに同じように不思議な安心感を覚えてくれたようです。

一人暮らしの空間に私が来ることを快諾してくれた彼には本当に感謝しています。
あの時の気持ちを忘れずに、幸せな結婚生活を送っていきたいと思います。

30歳になる直前に結婚

私は、30歳になる直前に結婚した。
それが早いのか遅いのかわからないが、私にとっては一番良いタイミングで結婚できたと思っている。
長い独身生活の中で、本当に色々な経験をさせてもらった。
小さな部屋のアパートでの一人暮らしも、今となっては懐かしい。
古いアパートではあったが、本当に愛しい部屋である。
そこを出る時は、必要以上にピカピカに隅々まで磨き上げ、「ありがとう」と言って出てきたことを覚えている。
その瞬間、涙が溢れてきて色んな思い出も一緒に流れてきた。
嬉しいことばかりではなかった。
楽しいことばかりはなかった。
色んなことを持ち帰って、そこで泣いていた。
そんな生活に終わりを告げる時、本当に感謝の気持ちでいっぱいになったのだ。
遥々長距離運転をして何度も来てくれた今の主人。
階段をしょんぼり上ると、部屋の前に大きな花束が置いてあった何回目かの誕生日。
暗闇の中でそれを見つけたものだから、初めは誰かがゴミを置いて行ったのだと嫌がらせを想像した。
でも、よく見ると優しさがいっぱい詰まった花束だった。
そんな私の大切な思い出がたくさんある土地。
今はもう年に一度行く程度になってしまった。

駅前には、とても腕の良いマッサージ師がいるお店がある。
電車で数時間のこの土地は、今はもう懐かしくて遠い存在になっている。
私が住んでいたアパートも、もう無くなっている。
安くて美味しいレストランもたくさんあるので、ちょっとした旅にはぴったりだ。

大好きなこの町に、これからもきっとお客様として家族で、或いは一人で足を運ぶことだろう。

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